今回、唯一歌ではなくポエトリーリーディングをしているのが「Teal」という曲です。
これも元々、林さんがご自身のアルバムやライブで発表していた曲ですが、とてもインスピレーションを掻き立てられる曲なので、この曲に合わせてリーディングをしたいな、とかねてから思っていました。
なんとなく前半は短い言葉、後半は長い文章という音のイメージはあったのですが、テーマを何にしようかと悩みました。
ちょうどその頃、ハワイの空と海が一望できる部屋に一週間くらい滞在していたのですが、毎日たくさんの「青」を眺めているうちに、
「『Teal』って色の名前だし、色の名前を並べよう」
と思い立ち、そこから「色」をコンセプトにした詩が生まれました。
昔、ニュートンが光をプリズムに通し、light spectrum(光のスペクタル)と呼ばれる原色に分けました。
(今回のアルバムタイトルの「spectrum」はここから来ています)
このニュートンの考えが現在の光学の基本になっているわけですが、これに異議を唱えたのがゲーテです。
私はそもそもゲーテマニア(笑)で、彼の詩もたくさん読んでいました。
詩人であるだけでなくゲーテは「ファウスト」でおなじみの劇作家でもありますが、それ以外にも色彩論、生物学、地質学、汎神論など自然哲学にも通じていて、また政治家でもあり法律家でもあるという、スーパーマンでした。
このゲーテが唱える色彩論はニュートン光学と真っ向から対抗している箇所が多いのです。
彼の色彩論の特徴は,白と黒の対比,光と暗黒の対立,というアリストテレスを起源とする古代以来の色彩論を受け継いでいるところにあります。
彼の言葉を借りるなら、「色は曇りの中に存在する」
つまり色は「白と黒」、「光と闇」の間にあるわけです。
これをとてもわかりやすく説明してくれるのが「ベンハムの円盤」です。
この円盤を高速で回転させると、白と黒しかない円盤に色が見えてきます。
しかも、その色の見え方は人それぞれ違うと言われています。
機会があれば是非ご自身で確かめられることをお勧めします。
もう一人、私が長年追い続けてきた人物がルドルフ・シュタイナーです。
彼自身もゲーテの信奉者であり、同じく多岐にわたる研究と発想で後世に多大なる影響を与えました。
現在はもしかしたら「シュタイナー教育」という用語として周知されているかもしれません。
幼児教育に力をいれていたのはもちろんですが、独自の音楽論、色彩論も展開し、何よりその哲学者、神秘思想家としての活動を通じて、人智学を立ち上げた第一人者として有名です。
ニュートンの唱えた光学とゲーテやシュタイナーの色彩論は相反する部分もありますが、共通している部分ももちろんあります。
物質と精神、アートと科学、主観と客観、両者は対峙するもののではなく、それぞれの立場から見て統合していくことが大切、というのが私の考えです。
そもそも色の見え方は、網膜や視神経や脳の働きによっても違うものです。
今年一時期SNSで話題になっていたこの画像、何色に見えますか?
ピンクに白の紐のスニーカー、もしくはグレーに緑の紐に見える、という人もいるかもしれません。
一説によると右脳優勢か左脳優勢かによって違うそうです。
(それだけではない気もしますが…)
私は日によって、ピンクに見える日とグレーに見える日があります。
そしてゲーテの唱えた、影と配色の関係もまた興味深いテーマです。
これを紹介するのにちょうどいい例を挙げます。
私が好きなアーティストの一人で、ジェームズ・タレルというアーティストがいるのですが、
彼が谷崎潤一郎の「陰影礼賛」にインスピレーションを得て越後妻有アート・トリエンナーレで発表した「光の館」という作品があります。
日の出と日没時に部屋の屋根が開くんです。新潟県の十日町にあり、作品ですが宿泊もできて、私も2回泊まりに行きました。
空の光の色が時々刻々と変わっていくだけでなく、補色の光の作用ででさらに空の色や濃度が変わっていく様が美しく、
影は必ずしも「黒」ではないことや、また異なる配色によって私たちの心に様々な感覚が生まれることを体験することができます。
音も色も、匂いも思いも、目に見えるものも見えないものも全ての素は同じで周波数が違うだけである、ということを
現在の量子力学は証明しています。
自分の気分が変われば、気になる色や音も変わるわけです。
Which color is resonant with your heart?
あなたの心に共鳴するのは、何色でしょう?
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